東洋医学の治療法
未然予防が東洋医学の基本
医療は、新たなステージを迎えつつあります。
西洋医学は、今病気を治すことに終始するだけでなく早期発見、早期の治療へ、そして今、病気を未然に防ぐことの重要性にようやく気付きはじめたようです。
西洋医学は、基本的に病名に基づき治療をします。しかし、東洋医学は"未病治"といって、病気を未然に防ぐという考え方が基本にあります。
たとえば、西洋医学では、外科医は心臓が悪いと心臓にメスを入れますが、手や足を触ったりはしません。これに対して、東洋医学である鍼灸では、臓器そのものを直接治療するのではなく、臓器の機能を遠隔操作によって治療します。
足や手など離れた場所に鍼や灸を施すことで、心臓の機能回復をはかるのです。言い換えれば西洋医学は病を診る、東洋医学は人体まるごとを診るとも言えます。
東洋医学の特徴
東洋医学は、病気になる前に健全な体質に整えておく、という考え方が特徴です。病気になってから治すという西洋医学の考え方とはここが大きな違いです。
さらに、病気になったときには、「体質や病気の本質を根本から治す!」という捉え方も、病気の箇所を主に対処するという西洋医学とは大きく異なっています。
東洋医学の特徴として
- 全身を見て治療を行います。現代医学(西洋医学)も全体を見ていないわけではありませんが、東洋医学は複数ある症状をもって「証」という概念で治療方針を決めています。
- 体の自然治癒力を高めることで治癒に導きます。
診断方法も、機械や採血をするのではなく、四診によって行います。つまり、体を侵襲することがなく、無害です。
五臓六腑の考え方
東洋医学では、人間の内臓のことを五臓六腑(ごぞうろっぷ)と表現をします。東洋医学の概念では、人の体は、内臓、四肢、百骸(百の骨)、五官、皮毛、筋、肉、血、脈などで構成されていると考えられています。
このなかで内臓は、人間の体の臓器(内臓)をその性質と機能から、5つのグループ「肝、心、脾、肺、腎」と「胆、小腸、胃、大腸、膀胱」の五腑に「三焦」を加えた6つの「腑」に分けられます。
東洋医学と西洋医学では、この臓器の捉え方が異なり、西洋医学の場合、内臓は物質として捉えているのに対し、東洋医学でいう「臓腑」はその生理機能の面から分類しているのです。同じ名称でも同一ではなく、置き換えることはできません。
東洋医学では、総ての病変は五臓六腑の不調和により引き起こされると考えており、証(あかし)はどの臓腑に異常があるのかを表わしており、どのツボを用いるかも同時に示しています。
証は、四診法と言う東洋医学独特の診察法によりその人の体質、病気の原因や症状などを十分に考慮して決定されなければなりません。ここでは、四診法について簡単に説明したいと思います。
四診(ししん)とは、東洋医学の主体となる診断法です。望・聞・問・切の四つをもって四診と呼びます。望・聞・問・切とは、望診、聞診、問診、切診のことで、視覚・聴覚・嗅覚・触覚などを使って行います。
- 望診
- 望診は視覚による診察法で主に顔と前腕内側の色艶を診たり、体格や動作などに注目します。
- 聞診
- 聞診は聴覚によって話し方や声の高さを聞き分けたり、嗅覚で体臭や口臭に異常は有るのかを診ます。
- 問診
- 問診は、患者さんの心身の状態を把握するため、患者さんご本人や家族の方に病院での問診票と同じような内容をお聞きします。
- 切診
- 切診は触覚によるもので経絡治療の診察の根幹を成すもので、脉診(みゃくしん)と腹診・切経などに分けられます。
脉診と腹診について
脉診は、四診(望診・聞診・問診・切診)の一つである切診に含まれますが、本来、脉診は最も伝統的な診断法です。
脉診とは、身体をめぐる経脉(気血が流れるルートで、五臓六腑の経に心包経を加えた12経)の拍動を触れることによって、その身体の状態を推測し、各臓腑の陰陽虚実やバランスなどを調べ、病気の診断や予後の判定を行い、治療方針を立てる方法です。
西洋医学で、脈拍の速さや強さやリズムを診断の助けとしていると近いと考えればよいでしょう。しかし、脈という現状の解釈には東洋医学独自の思想と理論が反映されます。
腹診は、腹に触れて腹の病状を調べ、腹の状態を通じて全身の生命力・生活力の異常を観察することで、今では切診に含まれる診断法の1つです。